DNA二重螺旋の溝について

第一問問3 に関して修正したいと思います.

一本の螺旋を作ると,まずそこに仮想的な円柱を見ることができます.二重螺旋を作るには,この円柱に沿うように合同な二本目の螺旋を作ればよいのですが、ここで図のパラメータrが出現します.この時R\neq2rであれば二重螺旋の溝に大小が生じるわけです.

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ではDNAにおいてrは何が決定しているのでしょうか.ワトソン・クリック塩基対は二線分をくの字になるように繋げたものと見ることができるので、塩基対が螺旋軸に垂直に積み重なっている場合は図のように見ることができます.

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h線分O_{k}O_{k-1}の長さとします.線分OBが一周したときを考えると

R=\frac{2\pi}{\theta}h

螺旋軸を見下ろすように見たとき、線分O_{n}B_{n}と線分O_{0}A_{0}が一致するところでr_{1},線分O_{m}A_{m}と線分O_{0}B_{0}が一致するところでr_{2}と二通りのパラメーターrが自然に現れます.それぞれ

r_{1}=\frac{\psi}{\theta}h

r_{2}=\frac{2\pi-\psi}{\theta}h

となるので、適当に整理して

\frac{r_{1}}{r_{2}}=\frac{\psi}{2\pi-\psi}

を得ます.従って、図のように\psi\lt\piであれば\frac{r_{1}}{r_{2}}\lt1より\psiの面が小さい溝に、2\pi-\psiの面が大きい溝に面することとなります.

このようにDNAにおいてはrはワトソン・クリック塩基対の形状、特に二本のN-グリコシド結合のつくる角度に依存して決定されているため、その角度の大小と面する溝の大小の一致はまず幾何学的に成立する事実であることがわかります.

実際には熱力学的要請に従って細かい構造は決定されているとみるべきでしょうが、幾何学的要請による構造が同時にコンホメーション的な要請も達成していることについては興味深いところでしょうか.

 

baklajanさんご指摘ありがとうございました!